大統領選挙を振り返るのは今回で最後にしよう。
選挙を通して議論されていたのは外交、イラク・アフガニスタン戦争、経済、教育、医療などなどどの国でも問題になるようなことばかりだったが、9月の経済危機以降は議論の中心が経済に移った。クリントン元大統領とブッシュ現大統領の規制緩和の波によってお金持ちがさらにお金持ちになるという政策が敷かれた。それによって貧富の差は大きくなるばかり。そして規制や自己浄化力のない金儲け主義者による経済危機だ。
オバマ氏は一貫してお金持ちにもっと税金を払ってもらって中流階級のてこ入れを主張。マケイン氏は富の分散は社会主義者だのマルクス主義者だのと批判した。マケイン氏は大統領になったら石油会社に対する更なる減税を約束していた。共和党の主張はとにかくお金持ちや経営者にお金を持たせれば雇用が促進されて経済が良くなるというのである。それは一理あるのだが、今の現状を見てもらえればそれが失敗であることは一目瞭然だ。会社がつぶれそうになってもCEOはボーナスを自分に出し、しかも年々業績に関係なしに自分の給料を上げていく。今年のCEOの給料額は普通のサラリーマンの約280倍だ。
この経済問題が大統領選挙の中心議題となってからはオバマ氏のリードが続いた。というのは共和党が過去8年敷いてきた政策が経済危機という形で失敗ということを世界に証明したからだ。それに経済危機が報道されて直後にマケイン氏は「経済の基盤は強固であります。」という発言を繰り返した。そう言ったかと思えばその数日後には「私はこの経済危機と戦い、ワシントンDCに戻ってリーダーシップを取る!」と言って大統領選挙を一時停止し、他のテレビ出演をキャンセルして大胆な政治的バフォーマンスに出た。かと思えばワシントンDCに帰らず、CBSのインタビューを受けてみたり、ワシントンDCに帰ったと思えば特にリーダーシップを発揮するでもなく、経済刺激策は自分の党である共和党によって否決されたのだ。政治的にもマケインという人的にも非常に痛い出来事だった。マケイン氏が一人相撲を取っている間にオバマ氏は相手の力を武器に変える柔術のように冷静に選挙を進めていった。オバマ氏の冷静さは選挙を通して高い評価を受けている。
政治的にも政策的にも劣勢の共和党マケイン氏とペイリン氏は打つ手がなくなり、個人攻撃に出て来た。オバマ氏を社会主義者とかマルクス主義とかテロリストと関連づけようとしたりしてそれはもう醜くて目を手で覆い隠さざるを得ない状況になってきていた。そんな中で最も笑えるのが「Joe the Plumber(配管士ジョー) 」である。彼はオバマ氏に税金に関する質問をして一躍時の人となった。年収が28万ドルという前提でオバマ氏に質問し、オバマ氏の税金政策によると彼の納税額は増えるということだった。それをマケイン氏は利用して頻繁に彼の名前を使ったり、演説に招待したりした。ジョーの主張によるとオバマ氏の税金バラマキ政策は社会主義者であると。しかし、彼は28万ドルの収入があるのではなく、28万ドルほどの収入があるビジネスを買収したいのだったそうだ。しかも彼は配管士の免許もなく、税金も滞納していて過去に二回生活保護も受けたことがあるとか。彼が反対する「税金バラマキ政策」がなければそんな苦しい時に生活ができなかったろうに。それに彼の現在の収入だとオバマ氏の政策の下では納税額が減るということだ。頭が悪いというか、恥ずかしいというか、嘘つきというか・・・まさに共和党政治の申し子だなあと思った。
共和党政治のもう一つの特徴は民主党をエリート扱いし、いかに民主党が浮世離れしているかということを主張する。オバマ氏とパリス・ヒルトンやブリトニー・スピアーズと結びつけようとしたり、特にペイリン氏は自分を「ホッケー母さん」などと言い庶民派であることを印象づけようとした。しかしその直後に選挙期間2ヶ月で服や化粧に費やした費用が日本円で約1500万円であったことが発覚。その矛盾に多くの人があきれかえることになるのである。
選挙当日はあまりにも気になって仕事があまり手に着かなかった。太平洋標準時間の午後4時ぐらいから東海岸の州の結果が入り始めて来た。4年前に苦い経験をしているので緊張でお腹の辺りが変な感じだった。午後4時すぎにかみさんと息子と一緒に近くの投票所に行って、かみさんはオバマ氏に投票した。その票の半分は自分からという気持ちだった。私はアメリカ国籍を持っていないので、投票権はない。その後夕飯を作るのが面倒なので近くのベトナムレストランに行った。そこの経営者もテレビにかじりついていた。「誰を支持しているんですか?」って聞くと「ジョンマケインだよ」と言った。私とかみさんは顔を見合わせ、そこでは静かにしてることにした。そこで速報が流れて来てオバマ氏のオハイオ州の勝利が決まった。そこで内心オバマ氏の勝利が決まったと思った。その経営者は信じられんとばかりにCNNからFoxニュースにチャンネルを変えてみたりしていたが、結果は全て同じだった。(笑)その後家に帰り、オバマ氏が順調に勝ち進む様子をMSNBCで見ていた。午後8時、西海岸の投票が終了するや否やニュース各局はオバマ氏の当選確実を発表した。前回の経験から自分の予想としては夜の12時ぐらいかなあと思っていたので「え?もう?」という感じであまり実感が湧かなかった。しかしその歴史的瞬間を目撃したのである。その30分後ぐらいにオバマ氏の勝利宣言と演説を聞いた。息子が寝てからもしばらくニュースを見ていて床に着いたが、興奮していたのかなかなか眠れなかった。
今回の選挙で過去8年続いた矛盾だらけの保守政治に終止符が打たれたような感じがする。Pro-lifeつまり命を大切にする立場を取り中絶禁止を訴えながら、多くの人を殺したイラク戦争や拷問に賛成したり、研究が進めば多くの人々の命が救われるであろう幹細胞研究をそれが人間になる前の胚であることから中絶と同じで胎児を殺していることと見なし禁止したりと異常なまでの宗教的イデオロギーで政治をだめにして来た。それが今終わりを告げアメリカはまた前進するに違いない。

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